2015年1月26日月曜日

ナショナルデータベース(NDB)活用の現況と今後 第3回(全3回)

3. NDBのさらなる利用拡大に向けた取り組み

 第2回に続いて、NDB活用の実績を見てきましたが、今後はどのような展開が期待されるのでしょうか。本節では、NDBの利用拡大に向けた動きについて取り上げます。

 NDBの利用申出者範囲については、社会保障制度改革国民会議報告書や平成25年6月14日に閣議決定された日本再興戦略において、適時要件を緩和して利活用を促すべきである旨が指摘されています。これを受けて厚生労働省は平成26年に入り利用要件の緩和に向けた取り組みを活発に行っています。

(1) 民間組織への提供

 要件緩和に関して、まず注目されるのが民間組織への利用申出者範囲拡大です。厚生労働省では、民間組織へのNDB第三者提供を検討するため、平成26年度から試験的な情報提供を行うこととしました。試行期間は1年間で、まずは一般公表、ウェブサイト等の公表を義務付けることを前提とした集計表情報のみを提供することが決まっています。模擬申出では、業界の中央団体から2件、シンクタンクを窓口として4件(うち営利企業2社、公益社団法人2社)から申請がなされ、審査がされているところです※17。

(2) ガイドラインの改正

 また、厚生労働省は平成26年10月1日付けで「レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するガイドライン」を改正し、いくつかの要件緩和を行っています。 

 主な改正内容は、サンプリングデータセットや集計表情報のセキュリティ要件緩和、サンプリングデータセットの公表物に係る事前確認の簡素化などです。また、利用申出書の受付はこれまで年2回の特定時期のみでしたが、改正後は常時受付を行うこととなりました。研究者にとってのNDB利用の敷居は下がりつつあると言って良いでしょう。

(3) オンサイトセンターの整備

 NDBの利用には、物理的に厳しいセキュリティ環境が求められており、これがNDBの利活用が急速に広がらない一因にもなっていたと考えられます。 

 厚生労働省では、これまでNDBを取り扱うためのセキュリティ環境構築が困難であった小規模な研究機関等に所属する研究者にも活用の機会を確保するため、平成27年4月以降に東京大学および京都大学にオンサイトセンターを開設する計画です。 

 オンサイトセンターの稼働後は、研究者が厚生労働省に利用申出を行い承諾されれば、研究者が個々にセキュリティ環境を構築せずに済み、オンサイトセンター内でデータセットを用いて必要な集計情報を得ることができるようになります。

(4) DPCデータの提供

 現在NDBはレセプトおよび特定健診・保健指導データを収載するのみですが、今後はDPCデータの提供も予定されています。DPCデータは情報の粒度が細かいため、まずは国の行政機関に所属する者を対象とした集計表での提供となる見込みですが※18、レセプトでは分析できないような患者の重症度等に関する研究も進むことが期待されます。

4. まとめ

 本コラムにおいてはNDB活用の現状及び、利活用の促進の取り組み等について見てきました。今後も、学術研究や政策研究の場面において、NDBによるエビデンスがより重要な役割を果たしていくものと考えます。

 なお、NDBの利用拡大に向けて様々な取り組みがなされているとはいえ、大規模なレセプト情報等のデータベースを扱うにはノウハウが必要であり、NDBを活用してどういったことが分析できて、どういったことが分析できないかを深く理解した上で利用申出を行うことが肝心であることも確かです。 


 弊社におきましても、NDBを含めたレセプト情報、DPCデータ等を活用した学術研究・政策研究のご支援を複数行った実績がございますので、もしご興味のある研究者の方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。


第1回はこちらをご覧ください。

第2回はこちらをご覧ください。

<注釈>
※17  厚生労働省 第21回レセプト情報等の提供に関する有識者会議資料1「民間利用に関する模擬申出審査について」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000051818.pdf)
※18  厚生労働省「DPCデータの提供について」平成26年10月3日(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000060297.pdf)