2014年12月22日月曜日

近年充実しつつあるDPCデータを活用した臨床研究 第3回(全3回)

4. DPC活用臨床研究の実例

  第二回に続いて、最近論文になったいくつかの研究の実例を通して、DPC活用臨床研究がどのようになされているかを見てみましょう。

・(1) 杉原・康永・堀口等(2014) "Robot-assisted versus other types of radical prostatectomy: Population-based safety and cost comparison in Japan, 2012-2013."  

 前立腺悪性腫瘍の手術に関し、「内視鏡手術用支援機器加算」がある場合と、そうでない場合について、周手術期のアウトカム等を比較。様式1から得た患者属性等で傾向スコアマッチングや重回帰分析を実施し、内視鏡手術用支援機器加算があるケースについては、術後の合併症等が有意に減ること等を示唆しています。

 日本では保険収載されて間もないロボット技術の評価であり、新技術の記述疫学や評価に対してDPCデータが比較的有用であることを示す好例と言えます。また、麻酔時間などもアウトカムとして抽出していたりするなど、手術や周手術期の研究の参考になるものと考えます。

・(2) 飯原・西村・嘉田等(2014) "Effects of comprehensive stroke care capabilities on in-hospital mortality of patients with ischemic and hemorrhagic stroke: J-ASPECT study."  

包括的脳卒中ケアに関する施設調査票に回答した調査対象病院からDPCデータを収集し、施設調査票と突合。様式1等から得た患者属性を患者レベルの変数とし、施設調査票から得た施設属性等を施設レベルの変数として、院内死亡率を主なアウトカムとしてマルチレベル重回帰を実施。包括的脳卒中センターとしての評価が高い施設は脳卒中の院内死亡率が低い傾向にあることを示唆しています。

 DPCデータ単独ではできない研究でも、DPCデータ以外の調査結果(施設調査等)と組み合わせることで分析が可能になるというケースの好例であると考えます。また、施設情報を突合することで、どのような医療提供体制(人的体制、機器、教育等)がアウトカムに密接に関連するかの示唆も得られ、データに基づいた政策への展開なども期待されます。


5. DPC活用臨床研究の今後

 DPCデータを使って分析を行っている研究者は良くご存知のことであり、また論文※7・8などでも指摘されているように、DPCデータは臨床研究にとって完璧ではありません(DPCデータ単独では記述疫学や後ろ向きの観察研究がメインにならざるを得ないこと、研究によっては重要なデータが調査様式に入っていないこと等)。

 しかしながら、DPCデータには通常の症例登録等よりもはるかに多様で詳細な診療行為の記録が含まれているなど、DPCデータの臨床研究への活用のメリットは非常に大きいことも確かです。また、コホート研究や学会による症例登録等との突合が技術的に可能であるケースも多々あると考えられ、DPCデータを用いた臨床研究は今後も進展が非常に期待できる分野であると考えます。

 弊社におきましても、多施設のDPCデータを用いた臨床研究等のご支援を複数行って来ていますので、もしご興味のある研究者の方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。


第1回はこちらをご覧ください。

第2回はこちらをご覧ください。

<注釈>

※7  康永・堀口「DPCデータベースを用いた臨床疫学研究」
医療と社会20(1)2010
※8 康永・松居・堀口等「DPC(Diagnosis Procedure Combination)データの臨床研究利用」J UOEH 36(3)2014