2014年12月8日月曜日

近年充実しつつあるDPCデータを活用した臨床研究 第1回(全3回)

 DPCを用いた入院医療費の定額支払い制度(以下、「DPC/PDPS」)が2003年に開始されてから今年で10年以上が過ぎました。2014年現在、DPC/PDPSの対象病院および準備病院の数は1,800病院を超え、一般病床数の55%を占めるまでになっています※1。

 DPC/PDPSの対象病院および準備病院は、厚生労働省に調査データ(以下、「DPCデータ」)を提出していますが、近年ではこれらのDPCデータを臨床研究※2に活用する研究(以下、「DPC活用臨床研究」)も増えてきました。本コラムでは、3回に分けてDPC活用臨床研究のこれまでと現況を簡単に振り返ります。


1. 増加しつつあるDPC活用臨床研究

 DPC活用臨床研究を網羅的にすべて洗い出すことは難しいため、今回は簡便な方法として、医学関連の文献が検索できるPubMed※3での検索結果に焦点を当てます。

PubMedにて"Diagnosis Procedure Combination"を含む観察研究等の論文を調べますと※4、140本が該当します(2014年10月下旬現在)。タイトルや要旨を元に、臨床研究では無さそうな内容の論文や、総評・レビュー、DPCデータを活用していない論文等を取り除くと94本が残りました。本コラムではこれらの論文をDPC活用臨床研究として見ていきたいと思います。

 DPC活用臨床研究の論文数がどのような水準で推移しているかについて、雑誌への掲載年別に見たのが図1です。DPC/PDPSが始まった2003年からしばらくの間、論文数はゼロで推移しますが、2010年以降急激に数を伸ばしていることが分かります。2014年については10月下旬までのデータですが、過去の年の2倍を超える勢いで伸びていることが分かります。

 DPC/PDPS導入直後は、導入に伴う医療費の試算等に関する臨床研究以外の論文が多かったようですが、導入後数年経った頃に、大規模な臨床研究に活用するのに十分なデータベース構築や体制等が整ってきたものと考えます。また、近年においては、臨床家をはじめとする研究者の間でもDPCデータがどのようなものかについて認知度が上がっていることも推察されます。


2. 進む海外への情報発信
上記で絞り込まれた94本のうち91本が英語によって書かれた論文でした。DPC活用臨床研究の海外への情報発信は、論文数の増加に正比例して伸びていると言えそうです。

 なお、DPC活用臨床研究が掲載された時点の当該掲載誌のインパクトファクター※5を調べたのが図2です。概ね1~6程度の範囲に収まっており(2014年の平均2.9)、傾向としても緩やかに上昇しつつあるように見えます(ただし、上昇のトレンドについては統計的には有意ではありません)。インパクトファクターは論文自体の評価では無く、掲載誌の論文の平均的な引用のされやすさを示すものですが、DPC活用臨床研究を視野に入れている研究者の方々にとっては一定の参考になるものと考えます。


第2回へ続く...

第3回はこちらをご覧ください。
<注釈>

※1 厚生労働省「平成26年度診療報酬改定の概要(DPC制度関連部分)」(www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039616.pdf)。

※2 本コラムにて臨床研究とは、厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」による定義(www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rinsyo/dl/shishin.pdf)に、疫学研究(同指針の定義に準じる)を加えたものとします。

※3 PubMed.gov(www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)

※4 検索語に"DPC"を使用すると本コラムにおける"DPC"と無関係な論文が数多く該当してしまうため。

※5 CiteFactor(www.citefactor.org/journal-impact-factor-list-2014.hyml)